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#13 いわて里山散歩|2025年5月の画像
#13 いわて里山散歩|2025年5月
2025.06.02
里山大好きライターの不定期連載「いわて里山散歩」。
今回は2025年5月の里山の山菜・キノコ・花の様子をお届けしよう。
※天候や大人の事情で更新が滞る可能性があります。ご了承ください。
※筆者はキノコ/山菜の専門家ではありません。この記事の情報だけでキノコ/山菜の同定を行うのは絶対におやめください。
ライター:イグチ アイコ
5月の週末はあまり天気に恵まれなかったが、ちょっと珍しいものを見た。
錦秋湖の水没林である。
雪解け水によって水位が上がるこの時期にだけ見られるもので、林が陸上の姿を保ったまま湖に浸かっている姿はなかなか面白い。SNSでも結構話題になっていた。
先日、錦秋湖と同じく奥羽山脈側にある豊沢ダムの近くも通ったが、そちらも今までに見たことがないほど水位が上がっていたので、去年は雪の量が多かったのかもしれない。
もっとも錦秋湖はここ数年、工事のために水位を下げていたそうなので、必ずしも積雪量に比例するものではないのかもしれないが。
5月の山菜の様子
さて、5月になって山菜シーズンは後半戦。4月よりも少し人里を離れて山の奥まで行くことが多くなる。
この時期の主なターゲットは根曲り竹ウドサク(エゾニュウ)だ。
これらについては昨年の記事で詳しく紹介しているので、気になる方はそちらも見てもらいたい。
この昨年の記事にてサクとよく似た別の植物について書いているのだが、生えている状態ではほとんど見分けがつかないので、改めてその違いを比較するためにそれぞれ切って写真を撮ってみた。
このように、サク(左)は茎の中が詰まっていて、別の植物(右)は空洞で……
などと、頭の中で文章を構築しながら撮影していたところ、ものすごい吐き気が!!!!!
右の植物の正体として疑わしいのは「オオハナウド」。オオハナウドは犬や猫には有毒だが人にはそれほど害は無く食べられるらしい。
ただ、海外には同じセリ科の似た植物に有害のものがあるので、環境によっては毒性が強くなるのかもしれない。もしくは私が人間より犬に近い可能性もある。
例え食べられるものだったとしても、今後はこの植物には触れないようにしようと誓った。
根曲り竹はベストのタイミングで天気が荒れてしまい、今年は厳しいかも…と心配していたが、なんとか確保することが出来た。
採れたてをその場で味噌汁にしていただく、なんてアウトドアらしいこともしてみた。自然に囲まれて食べるものは何故こんなに美味いのか……
すると、周囲の根曲り竹ことチシマザサの中に、こんなものを発見。
今年、全国でハチクの花が一斉に咲いたと話題になった。「竹や笹の花は100年おきに一斉に咲いて、その後一気に枯れる」といった話をよく耳にする。もしやこれも100年に一度の機会なのでは!?
…なんて思ったのだが、このフサフサしたものが出ているのはほんの一部だけだった。ちなみにチシマザサの花は約60年周期で、やっぱり群落全体で一斉に咲いて一気に枯れるらしい。花とはまた別の何かなのかもしれない。

次の写真は、虫が苦手な人は薄目で見てもらいたいのだが…
山深い地域に行ったので、前回の記事で紹介したイタドリの若芽「サシボ」が、少し葉が開き気味だがまだ残っていた。雪深い地域は全体的に山菜が太くなることが多いが、このサシボも4月に採取したものより一回り大きい。

しかし4月より気温は高くなっているからなのか、右の写真の虫が大量に群がっていた。
すると釣り人の父が「イタドリ虫ってのはこいつの幼虫か〜」と一言。「イタドリ虫」というのは渓流釣りで人気の餌で、イタドリの茎の中にいるのを捕って使うそうだ。

「そういうものがあるのか〜」と思いつつ、後日ちゃんと調べてみたところ、イタドリ虫は「アズキノメイガ」という蛾の幼虫らしい。えっじゃあこの虫は……??
正体は「イタドリハムシ」という全く別の虫。う〜ん、紛らわしい。

また別の日、少し遅めのシドケを毎年採りに行く場所でウロウロしていると……
何やらニョキッと生える見慣れないものを発見。
こ、これは………!!!
シオデだ〜〜〜!!!!!

「シオデ」は通称「山のアスパラガス」とか「和製アスパラガス」などと呼ばれる、見た目も味もアスパラに似た人気の山菜。
秋田では「ヒデコ」や「ソデコ」と呼ばれ、民謡の歌詞になるほどメジャーな山菜のようなのだが……
私にとっては何年も探し続けてきたのに一度も出会えなかった、憧れの山菜だったのだ!!嬉しすぎる…!

普通のシオデの他に「タチシオデ」という種類もあるそうなのだが、成長しなければ違いが現れず味にも違いがほとんど無いようで、食用として採取する時期のものは同種として扱われているようだ。
ほんの数本しか採れなかったが、アスパラより青臭さが無く、ワラビのように茎の内部にほんのりぬめりがあって、とても美味であった。
5月のキノコの様子
前回、黒いタイプのアミガサタケの紹介をしたが、黒いものより少し遅れて発生する黄色いアミガサタケに今年も無事出会うことができた。
しかし去年・一昨年と続けて大発生した場所だったのだが、今年はあまり数が多くなかった。どのキノコもアタリ年とハズレ年があるのだろう。
アミガサタケが生える場所のすぐ近くに、謎のキノコを発見
最初は何か大きめのキノコが古くなって腐っているのだと思い、軍手をして恐る恐る突っついてみたところ、意外にもグニャッではなくプルッとした手応え。
少し力を加えたら簡単に崩れてしまったが、裏面や断面を見た感じはキクラゲのような質感だ。
キクラゲの仲間は食べられるものが多いので、とりあえず採取して帰宅後図鑑で調べてみたところ、こいつの正体は「フクロシトネタケ」というらしい。残念ながら毒キノコだった。
こちらは今年2度ほど遭遇したキノコ。
なんとなく色や質感から食べられるものには感じなかったが、妙に目を引く存在感だったので写真だけ撮ったものだ。
だが後日調べてみたところ、「ハルシメジ」だった可能性がある。ハルシメジはいつか見つけてみたいと思っている憧れのキノコの1つなのだ。もっと注意深く観察しておくんだった!と後悔しても、もう後の祭り。
ハルシメジにも「ウメハルシメジ」とか「ノイバラハルシメジ」などいくつか種類があるそうで、検索して出て来る写真も見た目がバラバラ。写真だけでは到底分かりそうにない。
来年また会えますように……。
一方こちらは、しょっちゅう見かけるのであまり気に留めていなかったキノコ。
見た目は面白いからネタにはなるかと撮影していたのだ。名前は「エツキクロコップタケ」というらしい。なんだか格闘家のような名前だ。
改めて調べてみたところ、なんとこのキノコ、ネット上の情報では非常に珍しいらしい。
えええ…!近所の山でも、渓流沿いでも、ダム湖の周りでもよく見るから、ざらにあるキノコだと思っていた。 もしかしたら岩手にだけ異常に多いのだろうか?岩手の観光の目玉にどうだろう?エツキクロコップタケ。
5月の山の様子
これまでの山菜やキノコを探している最中、山の中で気になった植物も紹介しよう。
こちらは「ヒトリシズカ」という花。
名前の割に、全然一人で静かにしていない。みんなで仲良く並んでワイワイ楽しそうじゃないか。何がヒトリシズカだ。私の方がよっぽど一人で静かだ。
などと勝手に憤慨していたら、名前の由来は近縁種で1株に2本花が出る「フタリシズカ」というものがあり、その対比で付けられた名前のようである。
ちなみにフタリシズカの由来は能楽の「二人静」という、静御前を題材にした演目から来ているとのこと。まるで勘違いだった。恥ずかしい。
こちらは葉っぱがまるで花のように綺麗に並んでいたので撮影したもの。「緑色の花だ」と言われたら信じてしまいそうなほど美しい。
花が咲いているものもあったので、そちらも撮影し調べてみたところ…
葉っぱが3枚のものは「エンレイソウ」という種類のようで、葉・花・ガクすべて3枚あることから学名には「3のユリ」という意味の言葉が付けられているそうだ。
葉っぱが4枚以上のものは「ツクバネソウ」の仲間と思われる。普通のツクバネソウの他に「クルマバツクバネソウ」や「ヨコグラツクバネソウ」といった種類があり、それぞれ葉の枚数が違うようだ。
面白い葉っぱといえば、何やらシミのような模様が付いたものもいくつか見つけた。
画像検索で調べたところ、左の写真は「ハシバミ」、中央は「サルトリイバラ」、右は「ミズヒキ」というそれぞれ別の植物らしい。
結論から言うとこの模様の理由はよく分からない。環境によるものとか成長度合いによるものとか諸説あるようだがハッキリしていないようで、先の2つはほとんど模様に触れられていなかった。
最後のミズヒキのV字の模様は、「弘法大師が筆を拭いた」なんていわれがあるほどメジャーなものらしい。
このハート型の葉っぱが可愛い植物は、おそらく「コミヤマカタバミ」
似た種類で他に「ミヤマカタバミ」や「オオヤマカタバミ」などがあり、かなり見分けが難しいのだが、花の中心あたりがほんのり黄色くなっている点から「コミヤマカタバミ」と判断した。

ちなみに普通の「カタバミ」は、山奥ではなく身近にたくさん存在しており、やはりハート型の葉っぱが可愛らしい。
以前の記事でカタバミの実について書いていたので、気になる人はそちらも読んで欲しい。
5月の里の様子
5月に入りようやく日が長くなり、週末以外も自宅周辺ならば少し散歩できる時間が作れるようになってきた。
左:2025.5.9撮影、中央:2025.5.16撮影、右:2025.5.23撮影
いつもの散歩コースにちょうど目線の高さまで藤のツルが下がってきていたので、成長過程を撮影。
藤の蕾を初めて間近で見たが、しっぽのようで可愛い。1週間後にはバラけてちょっとみすぼらしい感じになってしまったが、さらに1週間後には花が開いて華やかになった。
こちらはアケビの花なのだが、左が今年自宅の近くで見つけたもの。右は昨年の5月の記事で紹介した、自宅から離れた山の中で見つけたものだ。形は似ているが色が全然違う。
調べてみたところ、おそらく今年見つけた色が薄い方が普通の「アケビ」で、昨年の色が濃いものは「ミツバアケビ」という種類のようだ。後者の方が比較的山奥に生え、実が大きいとのこと。
今年やけに目につくのがこの2つの花。
左は「オトメフウロ」という花のようで、どことなくハーブのような見た目の葉がオシャレで日本っぽくないと思ったら、やはりヨーロッパ原産の外来種のようだ。
右は「コメツブツメクサ」という名でこちらも外来種らしい。花言葉は「お米を食べましょう」。か、かわいい……!!!
花には疎い筆者でも、アヤメ・カキツバタ・ショウブがよく似た花だということは知っている。どれがどれなのかは全く分からないが。
左が沼のほとりに雑草と共に咲いていたもので、右が近くの家の人が手入れしていると思われる道沿いに咲いていたもの。きっとどちらかがアヤメで、もう片方はカキツバタに違いない!と意気込んで撮影したのだが……
調べた結果、なんとどちらもアヤメ。カキツバタとショウブには花びらの根元にある網目状の模様は無いのだそうだ。ただ、右のものはおそらく園芸用に売られている海外の品種と思われる。

こんな感じに道端の草花を眺めながら歩いていたところ……
え!?まさか……地面にウツボカズラが!?!?
と、遠目で発見した時に思ったのだが、よく見るとなんとタンポポの茎!!
周りの茎は普通の太さなのに、この1本だけどうしてしまったのだろう。よく見ると先端には複数の花がまとまって付いているように見える。
まるでケルベロス…いや、3つどころの数じゃ無さそうなのでヤマタノオロチの方が近いか。たかが散歩も、よく観察しながら歩けばこんな神話級のタンポポを発見することもある。


以上、2025年5月の里山の様子をお届けした。
来月も楽しい出会いがありますように。
イグチ アイコの画像
岩手で生まれ、岩手で育ち、岩手の野山でキノコなどを探して徘徊している妖怪。主に山の話をします。本当はインドア派。
最近釣りも始めて休みがいくらあっても足りない。夢は定年退職。
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