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夏の山菜「ミズ」の下処理や食べ方
2025.06.19
里山と釣り大好きライターによる連載「とてちてくうべし」では、食材を採るところから食べられる状態にするところまでの様子を紹介していく。
今回は山菜の「ミズ」の採り方、下処理、おすすめの食べ方を紹介しよう。
※筆者はきのこ/山菜の専門家ではありません。この記事の情報だけできのこ/山菜の同定を行うのは絶対におやめください。
※下処理や調理の方法は家庭で楽しむことを前提としております。販売等を行う際の参考にするのはおやめください。
※天然のものを口にする際は自己責任でお願いします。
ライター:イグチ アイコ
ミズを採ろう
今回のテーマは産直などでも手に入りやすいポピュラーな山菜「ミズ」
春の山菜ラッシュが終わり山で採れるものが少なくなる5月頃から、場所によっては10月頃までの長い期間採ることができるありがたい山菜だ。

正式名は「ウワバミソウ」。ウワバミとは大蛇のことで、蛇が好む湿地に生えることが由来と言われる。
生える場所だけではなく植物自体も水分を多く含んでみずみずしいので、「ミズ」という方言が実にしっくり来る。
アスファルト上の腐葉土に群生したミズ
珍しい山菜ではないのだが、平野部に住む人には身近とは言えないかもしれない。
比較的人里よりも山奥でよく見られ、渓流沿いの斜面、山奥の林道沿い、水で湿った崖の近くなど、暗くひっそりとしてジメジメした場所に行けばいくらでも生えている。
水を多く含んだ腐葉土を好み、溜まった落ち葉が放置されているような場所ならばアスファルトの上でも生えていることがある。
見分けるポイントとなるような特徴はあまり無いのだが、強いていえばこのギザギザとした葉っぱだろうか。
木の葉などではよく見るような形だが、地面から生えているものでは案外こういう葉は少ないような気がする。少なくとも筆者はこれまで、他の植物と間違えそうになったことは無い。
根元を見ると少し赤く色づいているのも特徴と言えるだろう。
地方によっては根元が赤くならない「アオミズ」の方が主流のようだが、今のところ岩手ではこの根元が赤い「アカミズ」しか見かけていない。
ちなみにアカミズの方がぬめりが強くて美味しいらしい。

採取する際は泥が付くので軍手などをはめ、茎の根元を掴んでブチッと引き抜く。
まれに横に這うように張っている根茎が付いて来てしまうことがあるが、茎だけ折って根は元に戻してあげよう。
群生していることが多いので採り尽くしてしまうことはまず無いと思うが、茎が太いものだけを選んで採り、細いものは残そう。
葉はかさばるのでその場で取ってしまっても良い。

私はこれまで人の手でミズが栽培されている現場を見たことはないが、ネット上では苗の販売や栽培方法の情報が出ているので、栽培している場所もあるかもしれない。
人の手が加わっていそうな場所、およびそれが疑わしい場所での採取は避けよう。
下処理の仕方
ミズにはアク抜きの手間が無いのも魅力の1つ。
まずは根元のヒゲ根を取りつつ、全体をざっと洗って泥やゴミ、虫を落とす。
概ねキレイになったら水には浸けずに、一度ザルなどにあげよう。
次に茎の薄皮を剥いていく。
私は葉を付けたまま採って来るので、葉を取りながら薄皮を剥く。薄皮が千切れないように慎重に剥いていくのがゲーム感覚で楽しい。
面倒な人はどうせ後で茎を一口大に切るので、茎を折りながら剥くのが楽で良い。

6月頃の薄皮はあまり気にならないので、完璧に全て剥く必要はない。
というより、薄すぎてどこが剥いてあってどこが剥いていないのか、全然見分けがつかない。なんとなく「皮がありそうだな〜」という見た目のところを剥いてやれば十分だ。
食感にこだわる場合や、成長しすぎて硬くなっているようならしっかりと剥こう。

葉っぱは基本的には食べないので捨ててしまう。食べる場合は天ぷらにするのが良いだろう。
「炒め物にして食べる」という情報を見かけたので試してみたのだが、私には硬くて美味しいとは思えなかったのでおすすめしない。
ただし天ぷらにする場合も、下処理の段階でよく観察しておいた方が良い。ミズの葉は虫食いが多いのだが、どうもその幼虫がそのまま葉の裏でサナギになるようなのだ。生えていた環境にもよるだろうが、この時は10枚に1枚くらいの結構な頻度でサナギらしきものが付いていた。
そしてこれを1枚1枚確認するとなると、下処理の時間は倍以上になる。そういう意味でも葉っぱを食べるのはおすすめできない。
薄皮と葉を取ってキレイになったら下処理完了。
量が少ないのならすぐに茹でて食べてしまおう。食べるまで少し間が空くのであれば湿らせた新聞紙に包み、ビニール袋や野菜の保存用袋に入れて冷蔵庫で保管しよう。
ちなみに先ほど洗った後にザルにあげるよう促した理由だが、不思議なことにミズは水に漬けておくとクルクルと丸まってしまう。
味や食感には特に影響はなさそうだが、絡まるとちょっと面倒。でもちょっと楽しい。
おすすめの食べ方
ミズはクセがなく食感が良い。おひたし、煮付け、汁物、炒め物、浅漬け、和え物……豊富な水分が邪魔にならない料理ならば何にでも合う。
今回はその中でも特におすすめしたい食べ方を、部位ごとに3つ紹介しよう。
まずどの食べ方でも、最初に軽く茹でておく。時間は1分ほどでOK。
火が通ると鮮やかな緑色になる。根元の赤みまで見事に消えてしまうのはちょっと寂しいが。
根元:ミズのたたき
茹でる前に赤かった根元の部分は、ぬめりが強いので「たたき」がおすすめ。
茹でたミズをビニール袋に入れて棒などで叩き潰し、そこからさらに包丁で細かく刻み、味噌と和えるだけ。
お好みで醤油や砂糖、山椒、生姜なども加えても良いが、味噌だけでも十分に美味しい。ぬめりの部分はふわとろ、茎の形が残る部分はシャキシャキで、いろんな食感が楽しめる。
とろろが好きな人なら、刻まずにすっかりすり鉢で潰してしまえば「みずとろろ」にもなる。とろろは茹でずに生のまま作ってもOK。

ちなみにこの食べ方は、農林水産省のホームページで「岩手の郷土料理」として紹介されている。
先端:味噌汁
柔らかい先端のあたりは4cmほどに切って味噌汁にトッピングするのが良い。
シャキシャキの奥にほのかにポクポク感もあり、味噌汁の幸福度が増す。
どことなく水が多い環境を好むミズ自身もイキイキとしているような気がする。
中央:浅漬け
残りはカブと浅漬けに。カブの白にミズの緑が映えて美しい。
柚子の皮とトウガラシを少し加えると、涼しげな香りとピリッとした刺激で、暑さで食欲が落ちている時でも自然と手が伸びる。
シャキシャキのミズと少しモキュモキュしたカブの、食感のコントラストも良い。
以上、今回の「とてちてくうべし」はミズの採り方・食べ方をお送りした。
ちなみに秋頃に採れるミズのムカゴも絶品なのだが、それはまた別の機会に。

山での採取に際しては危険やマナーなど注意すべき点も多い。こちらの記事も参考にして気をつけつつ、豊かな人生を送ろう。
イグチ アイコの画像
岩手で生まれ、岩手で育ち、岩手の野山でキノコなどを探して徘徊している妖怪。主に山の話をします。本当はインドア派。
最近釣りも始めて休みがいくらあっても足りない。夢は定年退職。
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