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#14 いわて里山散歩|2025年6月の画像
#14 いわて里山散歩|2025年6月
2025.07.01
里山大好きライターの不定期連載「いわて里山散歩」。
今回は2025年6月の里山の山菜・キノコ&粘菌・花の様子をお届けしよう。
※天候や大人の事情で更新が滞る可能性があります。ご了承ください。
※筆者はキノコ/山菜の専門家ではありません。この記事の情報だけでキノコ/山菜の同定を行うのは絶対におやめください。
ライター:イグチ アイコ
田植えシーズン真っ盛り!農家の皆さん暑い中お疲れ様です。
だが今年は例年と少し様子が違うようだ。筆者宅周辺は休耕田が多い地域なのだが、もう何年も田植えがされていなかった田に水が引かれ、若い人たちが田植え作業を行なっているのをよく見るようになった。
これも連日騒がれている米不足の影響なのだろうか?
6月の山菜の様子
5月の山菜ラッシュにあちこち飛び回り、少し疲弊気味となる6月は、自宅から徒歩で行ける範囲で散歩しながらささやかに採集を楽しむ。
まずは「ミツバ」
今までは5月に根曲り竹などを採りに遠出した際に山奥で見かけていたのだが、自宅周辺の里山でも日当たりの悪い場所では結構生えていることを発見した。これからはこの時期にミツバが食べたくなったら、散歩のついでに摘んで来ることにしよう。
ちなみに野生のミツバは危険な植物と間違えやすい。昨年の5月の記事で紹介しているので、詳しくはそちらを見てほしい。
こちらは「ハチク」。他より遅い時期に採れるタケノコだ。
今年の早春、全国でハチクの花が一斉に咲き、一斉に枯れるというニュースが話題になったので、筆者宅付近のハチクも枯れているのでは……と不安に思っていたのだが、幸い竹林はピンピンしており、タケノコも無事にゲット。
アク抜き不要で皮も剥きやすい、大変優秀なタケノコである。
そして昨年、自宅付近で発見した「ミズ」も変わらずに大群生していた。
ミズについては採り方・下処理・食べ方までを詳しく紹介した記事を書いたので、そちらを見てほしい。
今回は食べることを目的とした採集はこのくらい。あとは自然観察がメインとなる。
だが、今まで注目してなかったものに目を向けると新たな発見があり、なかなか楽しい里山散歩となった。
6月の植物の様子
まず見てもらいたいのが、こちらの5月に撮影した写真なのだが……
これは根曲り竹やワラビを採りに行った際に、地面付近で撮影したもの。モコモコとした感じが面白く、何かの木の実だろうと思いながら撮ったのだ。
しかし画像検索で調べてみたところ、これは「桐の蕾」だという結果だった。桐の花といえば背の高い立派な木の上に咲いているイメージ。何かの間違いじゃないだろうか?

検証のため、実際に桐の蕾を見てみよう!ということで、桐の木を探してみた。
花が咲く時期となっていたので木自体はすぐに見つかったのだが、やはりどれも背が高く撮影できそうなものがなかなか見つからない。
根気強く探すと、土手を走る道路沿いに生えている桐を発見!
ありがたいことに、蕾と花、さらに去年つけた実の殻が残っている状態。観察にはもってこいだ。
ということで、写真の左から蕾、花、実である。
蕾を見比べると、うーん、確かによく似ているが……5月に撮影したものより少し楕円形のような……

だが注目すべきは、蕾より実の残骸の方だったのだ。5月の写真をよく見ると、すぐ近くに実が落ちているではないか。5月の写真も桐の蕾で間違いなさそうだ。
地面付近にあったことは、よく観察しなかったのでハッキリとはしないが、おそらく枝が折れて落ちてしまったものだったのだろう。
6月中旬頃から一気に暑さが増し、桑の実が食べ頃の季節に。
筆者がよく歩く散歩コースでは残念ながら軒並み切られてしまったのだが、桑の木は脅威の生命力を誇る植物。生命力の象徴として崇められていることもあるほど。おそらく切られてしまった理由も、成長しすぎて通行の邪魔になったからなのだろう。
写真は新たに生えた若木で、まだ筆者の腰ほどの高さしか無いのだがしっかりと実を付けていて感動した。食べずに見守っていたら、数日で小鳥に食い尽くされていた。
先月の記事で散歩道に咲く「オトメフウロ」という花を紹介したが、こちらは自宅裏で発見した「ヒメフウロ」。よく建物の影になる場所に生えているので、見たことがある人も多いだろう。
調べてみるとこの花、日本固有のものは一部地域のみに生息しており、徳島・岐阜・三重・高知では絶滅危惧種としてレッドリストの指定がされているのに対し、他の地域では観賞用として外から持ち込まれたものが帰化し、外来種を管理するためのブルーリストに指定されているそうだ。
同じ植物なのに生えている場所で真逆の扱い。何気なく見ていた植物にこんなドラマがあったとは。
こちらもよく見かける植物で、名前は「ハハコグサ」という。我が家の庭でもレンガの隙間をこじ開けるように生えている。
見た目の印象とその豪快な生え方から、勝手に外来種と決めつけて見ていた。確かに本来は海外から入ってきた種類のようなのだが、それははるか昔の話で平安時代には日本に存在していたとのこと。なんと「春の七草」の1つだった。
秋の七草をネタに記事を書いたこともあるくせに、春の七草については全くの無知だった。なんせ岩手は七草粥の季節、地面は雪で覆われているもので……
おまけにこの草、元々は草餅の材料に使われていたそうで、平安時代から徐々にヨモギを使用するようになり、地方によっては江戸や明治頃まで「母子餅」として食べられていたようである。
食べられると聞いたら色々と採って食べているこの私、ぜひ食してみたいところなのだが、出たばかりの若芽は花が咲く時期の見た目とはかなり異なっているようなので、まずは来年の春にじっくり観察してみようと思う。
古くから食用とされている花といえば、こちらの「スイカズラ」もそうだ。漢字で書くと「吸い葛」で、花を摘んで吸うと甘い蜜が出ることが由来。まだ砂糖が無い時代にそのポジションを担っていたそうだ。
筆者宅の庭にもたくさん生えているのだが、6月7日頃には全く咲いていなかったのに、ほんの2日ほど見ない間に満開になっていた。これが咲くと近くを通るだけで甘い香りに包まれる。その匂い、色、形から、名前を知らなかった頃は勝手に「バナナの花」と呼んでいた。
必ず2つセットで咲くからなのか、花言葉は「愛の絆」とのこと。なんともロマンチック。
同じく2つセットで咲く花で、こちらは「ツルアリドオシ」という。いつも秋にキノコを探しに行く森にたくさん咲いていたのだが、この時期はスルーしていたため初めて見た。
日当たりが悪い場所を好む花だそうで、見渡すと確かに暗い。秋に木々の葉が落ち明るくなった姿しか知らなかったので、この時期は薮に覆われて歩きにくいと思っていたのも近づかなかった理由だったのだが、葉が日光を遮り下草が育っていないのでとても歩きやすかった。
よく知った場所でも、季節が違うと全然違う顔が見られるのだと、改めて思い知らされた。
左:2025.4.17撮影、右:2025.6.15撮影
そういえば4月の記事で定点観察まがいなことをした時に撮影した場所は今どうなっているのだろう?と、再び撮影してみた。
左が4月17日で、右が6月15日。たった2ヶ月でご覧の通り、全く元の面影が無い。自然ってすごい。
前回、アヤメ・カキツバタ・ショウブのどれかと思われる花を2種類掲載し、結果どちらもアヤメだったという話をしたが、今月もまた似た花を発見。
アヤメは花びらの根元に網目状の模様があることを学んだので、今回はカキツバタかショウブのどちらかだ。
正解はショウブ。花びらにある筋が黄色ならショウブで、白ならカキツバタだそうだ。これでもうこの3種類で迷うことはないだろう。
せっかくならカキツバタも見つけてコンプリートしたいので、今後も探していく。
6月のキノコ・粘菌の様子
突然だが、筆者は今年の年明けにスマホの機種変をした。
だからどうしたという話だが、実はこの機種変が自然観察に大いに役立つこととなったのである。
カメラに「接写モード」が追加されたのだ!!
おかげでこんなに小さなキノコも、こんなに近くでキレイに撮れるようになった。
前のスマホ時代にもスマホカメラに付けられるルーペを買って接写を試みたが、なかなかキレイに撮れずにヤキモキしていたのでこれは嬉しい。
ちなみにこのキノコは「ヒメカバイロタケ」というキノコのようだ。
お!ここにもキノコが……
と、撮影しながらよく見ると、キノコの周りに何やら玉状のものが…………
こ、これは…!!!
粘菌だ〜〜〜〜!!!!!!しかも1箇所にいろんな形態が集まっている!!
テレビのネイチャー番組で見て以来ずっと見つけてみたいと思っていたのだが、こんなに近くに普通にあった。
だがまさかここまで小さいとは……。歩きながらキョロキョロしていては、見つからないわけである。
ちなみにこれは変形菌の「モジホコリ」の一種のようである。このマチ針のような形状になる前のアメーバ状態のものなら何度か見たことがある。
腰を据えて粘菌探しに集中すると、他にも続々と発見した。
このパッと見、ただカビているように見える切り株も……
拡大してみるとこんなに美しい姿に!こちらは「タマツノホコリ」という種類らしい。
この鮮やかなものは「クダホコリ」の、まだ若い子実体のようだ。さらに育つと茶色くなって、突起状の部分がもっとハッキリ分かれるようである。
ここでお弁当の明太子を落としたら、見分けがつかなくなりそうだ。
左:2025.6.21撮影、右:2021.11.6撮影
こちらの細長いものは「ムラサキホコリ」。左が今回発見したもので、右は2021年に撮影したものである。右の写真を撮影した当時はキノコの一種と思い込み、いくら調べても正体が分からず苦労した。
左のまだ胞子が付いている状態はチョコバナナが寄り添ったような形で、胞子を飛ばした後は右のようにフサフサの毛束のような状態になるらしい。
左:2025.6.29撮影、右:2022.10.29撮影
こちらは以前にも紹介したことがあるが、「マメホコリ」という変形菌。1cmほどの大きさに成長するので、肉眼でも簡単に見つけることができる。
山を歩き始めた頃、何らかのキノコの幼菌に違いない!と思い、数日後に見に行ったら全く成長してなくてガッカリした思い出がある。マメホコリからすればいい迷惑である。
若い頃はピンク色で成長すると黒っぽくなるが、ポコポコと集まって発生する様が可愛らしくよく撮影する。左が今月撮影したもので、右は2022年に撮影したものだ。
マメホコリよりも2まわりほど大きいこれも粘菌の1種だろうと撮影したものなのだが、どっこいこちらは「クロコブタケ」というキノコらしい。シイタケ農家にとっては害菌として有名なようだ。
素人目には粘菌とキノコの何が違うのか全く分からないが、専門家から見ると全く異なる生き物らしい。ちなみに「粘菌」というのもかなり大雑把な呼び方で、原生粘菌、真正粘菌(変形菌)、細胞性粘菌……といろんな種類があるそう。軽はずみに手を出せない領域だ。今後も観察を続けつつ理解を深めていきたい。
こちらは「木の芽かな〜?」と思いながら、何となく撮影したもの。調べてみると「ヒメクチキタンポタケ」というキノコであるようだった。
さらにこのキノコについて調べてみると、なんとキマワリという虫の幼虫から生える冬虫夏草とのこと!!
これは確かめてみなければ!
ということで後日、再び撮影場所に赴くと、変わらず同じ場所から生えていて一安心。
慎重に切り株を削っていく。ノミも用意して行ったがかなり腐食が進んでおり、手の力でも崩すことができた。
キノコの根元を辿るように削っていくと……うーん……なんとなく幼虫のように見えなくもない塊に辿り着いた。
もう少しキレイにしたいところだったが、かなりもろくなってしまっていて、これ以上触るとバラバラになってしまうのでこれが限界。
またいつか、絵に描いたような見事な冬虫夏草を見つけてリベンジしたいものだ。
オマケ:庭のハーブの話
筆者の母には数年おきにハーブにハマる波が来る。
たまたま料理でミントを使用したい機会があり、母にミントはどれかと聞いたところ……
「これとこれの、どっちかがペパーミントで、どっちかがスペアミントだと思う!でもね〜職場の人に写真見せたら、これはレモンバームだって言うの!!」

えええ……なんて曖昧な……
とりあえずちぎって嗅いだら、どちらもハーブらしい香りがしたのでその時はミントと信じて使用したのだが、後からしっかり調べたところ、左は母の職場の方々がおっしゃる通りレモンバームであった。
そして右は…なんとオレガノ。全然違った。
ただオレガノは和名を「ハナハッカ」と言うそうなので、使い方としては間違いではなかったのだろう。
ちなみにこれらのハーブから少し離れた場所で、半分野生化していたこれこそがペパーミントであった。
以上、2025年6月の里山の様子をお届けした。
来月も楽しい出会いがありますように。
イグチ アイコの画像
岩手で生まれ、岩手で育ち、岩手の野山でキノコなどを探して徘徊している妖怪。主に山の話をします。本当はインドア派。
最近釣りも始めて休みがいくらあっても足りない。夢は定年退職。
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