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#15 いわて里山散歩|2025年7月の画像
#15 いわて里山散歩|2025年7月
2025.08.04
里山大好きライターの不定期連載「いわて里山散歩」。
今回は2025年7月の里山の花・虫・地衣類などの様子をお届けしよう。
※天候や大人の事情で更新が滞る可能性があります。ご了承ください。
※筆者はキノコ/山菜の専門家ではありません。この記事の情報だけでキノコ/山菜の同定を行うのは絶対におやめください。
ライター:イグチ アイコ
暑い!!

そして……

雨が降らない!!!

5月の記事で錦秋湖の水没林の話題に触れたが、久々に錦秋湖の近くを通る用事があったので、今あの水没林がどんな状態か見てきた。
ご覧の通りすっかり水位が下がり、ただの林になってしまった。
ほんの数ヶ月前までここが全て水に沈んでいたなんて、この目で見ていても信じられない。ダムのスケールの大きさに改めて圧倒させられる。
キノコもご覧の有り様。もはや天然のBBQである。
こうもカラカラでは夏キノコを探しに行く気も起きない。

ということで今月もキノコや山菜ではなく、他の生物たちの話をメインでお届けしよう。
地衣類・コケ・シダ植物の話
先月の記事で粘菌の話題に触れたが、似て非なる生き物で「地衣類」というものがある。
地衣類は菌類藻類が合体し、共生している生物。本体にあたる菌類は光合成できないが、体に住まわせた藻類に光合成してもらって養分を得て生活している。
発見したものの中で、一番地衣類らしい見た目をしているのがこちら。「カラクサゴケ」という種類らしい。
樹皮に居ることが多いが、岩やコンクリートに発生することもあるそうだ。
こちらは「モジゴケ」の仲間。
引きで見ると虫のように見えてギョッとするが、近くで見ると確かに文字のように見えなくもない。
苔と共に地面に生えていたこちらは「ジョウゴゴケ」の仲間。その名の通りジョウゴ(漏斗)にそっくりな見た目をしている。
ニョキニョキと集まって生えている姿は、キノコや粘菌に似ていてとても可愛い。
こちらも地面に発生していたものだが、近そうなものはイボゴケの仲間だろうか?
周りの苔などを巻き込んだまま成長していて、まるで化石のよう。
この2つはまだ成長段階なのか、調べてもそれらしきものを見つけることが出来なかった。
右のものは拡大するとサンゴ礁のようで、「海の中だ」と言われて見せられたら信じてしまいそう。
一番ユニークな見た目なのがこちらの「コアカミゴケ」。まるでマリリン・モンローの唇のように見えるので「モンローリップ」とも呼ばれている。
とても可愛らしいので見つけてみたい人も居るだろう。切り株、倒木、地上などから発生し、それほど珍しいものではないとのことだが……
サイズ感はこの小ささ。見つけたい人は地面を凝視しながら散策しよう。
地面ばかり見てうっかり足を踏み外さないように。

今回紹介した地衣類だが、全て名前に「コケ」が付いていることに気付いただろうか?
実は地衣類は昔、生物学界でも長い間「コケ植物」とされていたのだそうだ。そのため多くの地衣類に「コケ」が付けられているが、実際は全く違う生き物とのこと。(今でも地衣類や藻類などを含めて「苔」という言葉が使われることもある)
さて、その「コケ植物」について。
元々筆者は苔を見ること自体は大好きで、神社・仏閣など苔がよく生える場所に好んで出向く質だったが、その種類・生体については全くの無知。
この機会に詳しくなってやろうと、コケ図鑑を購入して開いてみたのだが……

違いが全然わからない!!!!!

図鑑だけ見る分には、それぞれの特徴などが詳しく書かれてはいるのだが、いざ自分が発見して撮影したものがどれにあたるのかと見比べると……どれでもあるようにも、どれでもないようにも見えてさっぱりだ。
そしてキノコもそうなのだが、現実では必ずしも図鑑に書かれた特徴が分かる状態で生えているとは限らない。
大きく分けて「セン類」「タイ類」「ツノゴケ類」の3つに分類されるとのことだが、その違いですら見た目だけでは判断が難しい。上の写真はおそらく左がセン類で、右がタイ類と思われるが、説明するには大量の専門用語を用いないといけないという恐ろしい世界だった。

だが山菜も最初はそうだった。今でこそメジャーどころの山菜は見ただけで判別できるようになったが、知らない頃は木から生えた若芽は全てタラの芽に見えたものだ。
ずっと観察を続けていけば、いつか見ただけで違いが分かるようになるかもしれない。

と、前向きに考えたところで更なる混乱がもたらされるのである。
皆さんはこの植物、何の仲間に見えるだろうか?
私は完全に苔の仲間だと思い込んで写真を撮っていた。ところがこいつ、調べてみると「ヒカゲノカズラ」という名前のシダ植物(広義)らしいのだ!
確かにこのように茎が蔓のように這っている状態を見ると、苔とは違うかなという気もするが、それでもシダ植物のイメージとは繋がらない。こうなると一般人にはもうお手上げである。
ちなみにこのヒカゲノカズラ、秋田出身の父は「きつねのけらっこ」と呼んでいたそうだ。「けら」とは「蓑」の方言。これを集めてキツネが身にまとう姿を想像すると微笑ましい。
もう1つ、一目でシダ植物とは分からなかったのがこちら。名を「ミツデウラボシ」というそうだ。
成長すると葉の根本から3つに分かれて鳥の足のような形になるらしいのだが、写真のものはまだ若く葉が分かれていないし形も丸っこい。
そのため、よくドライフラワーにされるゴウダソウ(ルナリア)の実のように、種が入ったサヤだと最初に見た時は思ったのだが……
裏を見ると胞子嚢が剥き出し!
なるほどこれならシダ植物と判別しやすい。みんなせめてこのくらいには分かりやすい見た目をしておいて欲しい。
7月の植物の様子
先ほど「鳥の足のよう」という表現をしたが、これこそまさに鳥の足に例えられている植物。名を「トリアシショウマ」という。
いくつも枝分かれして花が咲いているからそう呼ぶのかと思いきや、由来は春に出る若芽の形状によるものらしい。そしてこの若芽、とても美味しい山菜だそうだ。来年の春はぜひ探してみたい。
近くに同じように頭を垂れる花が咲いていた。こちらは「オカトラノオ」というらしい。
トリアシショウマのように枝分かれせず、まとまって垂れているので、確かに尻尾のようだ。
後日別の場所で、また同じように頭を垂れる花を発見。「この前見たのと同じ花かも!」と写真を撮ったが、調べるとこちらは「ノギラン」というまた別の花。
名前に「ラン」と付くくせに、かつてはユリの仲間に分類されていた。拡大して見ると確かに小さなユリの花がたくさん付いているように見える。
ちなみに垂れていたのは暑さと花の重みによるものだったのか、本来は上に伸びる花のようだ。
一方、ランの仲間なのに一見ランに見えないこちらは「ネジバナ」。 こちらも花1つ1つを拡大して見るとラン科であることが分かりやすい。
筆者宅周辺に生えていたものは環境が変わって激減してしまったが、割とよく生えている花なのでぜひ探して観察してみてもらいたい。
まるでフジの花に見えるこちらは「サワグルミ」の実。先人たちもフジに似ていると思ったようで「フジグルミ」という別名もあるそうだ。見て分かる通り、このクルミは食用にはならない。
どの生物も「仲間」とする定義は見た目では分からない。人間も国や人種で区別するのがいかに乱暴かが身に沁みる。
そんなことを考えながら歩いていると、ギョッとする見た目の葉っぱに遭遇。植物自体は「ヌルデ」の木で、この葉っぱに付いているのは「虫こぶ」らしい。
ヌルデに付く虫こぶはいくつか種類があるそうで、この写真のように葉っぱの表面に小さいこぶがいくつも付いたものはヌルデフシダニというダニによる「ヌルデハイボケフシ」という虫こぶ。

もう1つ、ヌルデシロアブラムシというアブラムシによる「ヌルデミミフシ」という虫こぶは、葉の軸のあたりにまるで果実のように大きく育つらしい。
その虫こぶは「五倍子」と呼ばれ、染料や薬に使われたそうだ。お歯黒にも使われていたそうで……昔の人の勇気を讃えたい。

ちなみに今回見つけたヌルデハイボケフシには……特に用途は無いようである。
染料といえば、森の中でこんな青緑色に染まった木片を見たことがある人も多いのではないだろうか?
これは「ロクショウグサレキン」というキノコに寄生されている状態なのだそうだ。これから抽出した染料で染めた帯紐をネット上で見つけたが、とてもキレイな色だった。
キノコの姿が見れるかもと思って拡大してみたが、まだ子実体は出ていないようで虫が削った跡のようなものしか見つけられず残念。
7月の虫の様子
岩手の子供たちももう夏休み。夏休みといえばセミの抜け殻である。
筆者も童心に帰ってセミの抜け殻を撮影してみた。
とはいえ虫にも詳しくないので、スマホ片手に画像検索に頼ってみる。
左の写真を検索するとAIが「これはニイニイゼミの抜け殻です」と答えてくれた。
続いて右の写真を検索してみると……

AI「これはセミの抜け殻です」

分かってんだよそんなことは

「これだからAIは…」と悪態をつきそうになったが、実はこれにはちゃんと理由があった。
実は数あるセミの抜け殻の中でも、ニイニイゼミの抜け殻は極めて異質。
身体が小さく丸っこく、全体に泥が付いているのはニイニイゼミだけの特徴なのだそうだ。目もウルウルしているように見えて可愛い。抜け殻だけど。
一方、こちらはミンミンゼミアブラゼミの抜け殻のようなのだが、この2つを見分けるのは非常に困難。
触角の付け根から3番目の節が長いか否かで判断するらしい。長ければアブラゼミとのことだが、この写真では特に長いようには見えないのでおそらくミンミンゼミ。
このかっこいいトンボは「ハグロトンボ」。別名「ホソホソトンボ」というらしい。可愛い。
夢中になって追いかけながら何枚も撮影したのだが、後から見返すと写真によって胴体の色が違うことに気付いた。左の全体が黒い方がメスで、右の青緑色に光っている方がオスとのこと。
これはキノコを撮影したものなのだが、キノコの種類を同定しようと撮った写真を拡大して調べていたところ……
なんか居る!!!!!!
これは「モエギザトウムシ」という虫らしい。何枚か撮っていたのに、全然気付かなかった。
なんという可愛さ。今度見つけたら指に乗せてみたい。見つけられそうにもないが。

そうやって虫やキノコを探しながらウキウキと歩いていると……
唐突にダメ出しをくらった。
え、何コレ??なんで空中に×印が???
よく見るとクモの巣。残念ながら巣の主は見つけられなかったが、とてもキレイに編まれている。
この几帳面さ、見習いたい。


以上、2025年7月の里山の様子をお届けした。
来月も楽しい出会いがありますように。
イグチ アイコの画像
岩手で生まれ、岩手で育ち、岩手の野山でキノコなどを探して徘徊している妖怪。主に山の話をします。本当はインドア派。
最近釣りも始めて休みがいくらあっても足りない。夢は定年退職。
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