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正月飾り「門松」イチから作れるか!?
2024.12.13
もういくつか寝るとお正月。
12月13日は「正月事始め」とのこと。万全の体制で正月を迎えるために準備を始めよう。
ライター:イグチ アイコ
「正月事始め」とは?
記事のネタになるものはないかと日本の行事について調べていると、12月13日にこんな文字を見つけた。

正月事始め

…はて?聞いたことのない響きだ。
なんでも、正月に神様をお迎えするための支度を始める日だそうで、12月13日から始めて28日までに終わらせるものらしい。
なんてことだ。むしろ28日から始めるものだと思っていた。忙しい現代人にはなかなかシビアなスケジュールである。 だが、正月休みは何もしたくない人や、正月はむしろ忙しいという人にとっては早めに始めておくのは良いかもしれない。

ちなみに12月13日である理由は、古代中国のものを基にした暦で吉日とされる日とのこと。
要は「何かを始めるのに縁起が良い日」ということらしい。

で、その正月事始め、何をする日かというと…
まずは「煤(すす)払い」。つまり大掃除のことだが、本来は掃除だけではなくお清めの意味もあるそうだ。
神棚から始め、次に台所…と掃除する順番があったり、笹竹の先に葉や藁を付けた専用の道具を使ったり、使い終わった道具はお焚きあげしたりするらしい。
現代では笹竹などは使わず新品の掃除道具で代用しても良いそうだが、毎年ダイ◯ンを買い直すなんてごめんである。信心深い人は頑張ってほしい。
もう1つ「松迎え」という行事をする日でもあるそうだ。
こちらは正月飾りの門松に使う松を山から伐って来る日とのこと。
ふぅん…山から……

ご存知の方が居たら嬉しいがこの私、昨年の秋に十五夜をするために秋の七草を野山で自力で集めるという無謀なチャレンジをしたことがある。
やるしかない!

ということで今年は、門松の材料を野山で探し、イチから作ってみようではないか!!
竹を採る
「門松」の名の通り、かつては松だけを飾っていたそうなのだが、鎌倉時代以後に竹も飾るようになったそうで、現代ではさも主役という顔をして中央に陣取っている竹。
この竹次第で全体のサイズが決まるので、まずは竹を用意しよう。

竹といえば一般的なのは孟宗竹。親戚の家に孟宗竹の林はあるが……
あれを切るとなると、もう採取なんてレベルじゃない。伐採である。普通に危険だ。
そこで目をつけたのが……
筆者の連載「いわて里山散歩」のシリーズにて、春にタケノコを採取した放置林の「淡竹(ハチク)」だ。
タケノコの頃は直径5〜6cmほどの太さがあったが、成長したものは3cmほどで手頃なサイズ。父によると竹はギュッと凝縮しながら成長するため、タケノコより幅が狭くなるとのこと。
ひとまず林から採取する際は父にノコギリで切ってもらい、無事に竹をゲット!
松を採る
松はその辺の道端にいくらでも若木が生えているので、難なく入手可能。
竹の大きさ的にミニサイズの門松となりそうなので、本体ではなく小枝を剪定バサミでいくつかカット。力も使わず簡単に切ることが出来た。

この松がもう少し成長したら、この時期は根本にフユヤマタケというキノコが……
おっと、今回はキノコの記事ではなかった。「キノコが気になって話が頭に入らない!」という方は↓の記事を読んで欲しい。
土台の材料を探す
一番頭を悩ませたのは、門松の土台部分に巻く素材だ。
大きな門松では、むしろや割った竹が巻かれている部分だが、ミニサイズは何が良いだろう?
候補1:稲藁
まずは本家門松のむしろにも使用される稲藁。もう稲刈りはとっくに終わりキレイなものは無いが、ご近所さんの田んぼを見ると細かいものが残っているので入手は可能そう。
ただ、とても細く柔らかく、そのままでは弱すぎるのでやはり織ってむしろにする必要がありそうだ。

父の実家には昔、むしろや俵を織るための織り機があったそうだが、今はもう残っていない。
手編みも可能なようだが、時間がかかりすぎるので一旦保留。
候補2:ヨシ(葦)
続いて近所の沼に生えているヨシ(葦)を見てみた。太さも固さも悪くない。
ただ、まだ穂を付けて元気に生えているものは、皮が剥けると青っぽいので枯れたものを選ぶ必要があり、数を集めるとなると沼に入って探すことになりそうだ。
こちらも保留。
候補3:ススキ
最後に十五夜の記事でもお世話になった、近所のススキの原っぱへ。
太さ・固さ・色、どれも申し分なし!地面もしっかりしていて、風が吹けば波になるほど生えているので量も十分。よし、ススキにしよう!!

茎を剪定バサミで切り、葉や穂を落として集めること数十分……
ふと、あることに気が付いた。

葉を落としやすいススキと、落としづらいススキがある。
↑これが、葉を落としづらい方の葉と穂。
↑こっちが、葉を落としやすい方の葉と穂。
葉っぱの生え方が明らかに違うし、穂もなんだか茶色っぽくてボソボソしている。
……これ、ススキじゃないのでは???

よく分からないが、とりあえず採りやすい方だけを集めた。集めに集め続けて…
ちょっと集めすぎた。
こういう、無心で黙々とする作業はついやりすぎてしまう。少し病んでいるのかもしれない。

で、この植物、帰宅後に葉や穂の特徴を頼りに調べてみたところ

ヨシかもしれない

で、でも、全然水辺ではないし、湿地というほどぬかるんでもいないのに、そんなことあるんだろうか。

ハッ…!!!( ゚д゚)

先にも申し上げた通り、私は去年この場所で、十五夜のためのススキを採取しているのだ。
おそるおそる、その記事を見てみた。
十五夜の記事より
ヨシだったかもしれない
門松作り開始
気を取り直して、主な材料が集まったのでいよいよ門松作りを開始する。
まずは父に切ってもらった竹を、細かく切るところは自分でやってみる。
細いし中は空洞だからと甘く見ていたら、これがなかなか大変だった。表面がツルツルしているので、最初の切り込みを入れる際にズレて傷が付いてしまう。そして凝縮して育っていることがよく分かった。ものすごく固い!!
何度か失敗をしながら試し切りを重ね、ようやくコツを掴み、
なんとかそこそこキレイに切ることに成功。
慣れるほど無駄な力を使わずに済むようになったが、それでも1回切るごとに切れた息を整えるほどの大変な作業だった。
次に土台用にペットボトルをカット。500〜600mlのものを、半分から少し下あたりで切った。
これに竹を固定するため、私は土を入れようかと考えていたのだが、
父の発案で、園芸用の吸水スポンジを使うことにした。
固定できれば何を使っても良いと思うが、この吸水スポンジは大正解だったのでオススメする。
また、この後の工程のためにあらかじめペットボトルに吸水スポンジをある程度入れておこう。ペットボトルを握れるほど強度がないと苦戦する。
次にススキ…ではなくヨシを、ペットボトルの高さより2cmほど長く切って、その長い部分を折り曲げておく。しっかりと強めに折っておくのがポイント。
ヨシをペットボトルに仮留めするため、ペットボトルに両面テープを貼ってヨシを固定しようとしたが…これは悪手だった。
両面テープの粘着力が弱かったのか、全く固定されない。
作戦変更。まずヨシを両面テープに並べてしっかり貼り付けてから、ペットボトルに巻き付けることにした。
それでも弱く手を離すと分解してしまうので、また父に手伝わせて紐で固定してもらった。グルーガンとか、もっと強力なものを使うことをオススメする。
なんとか土台完成!この工程が一番大変だった。
先ほどヨシの長めにしたところを折り曲げたのは、このように土台の周りに放射状に広げるため。しっかり折れていないと、戻る力で浮いてきてしまうので注意。
土台に切った竹を3本刺す。
この後、後ろのスペースに松を刺すのだが、松とのバランスを取るために土台の手前に、浅めに刺しておくと調整がしやすい。
同じ容量で2つ用意。
竹の長さを3本で微妙に変え、かつ左右で対象になるようにするとソレっぽくなる。
松の量や長さはお好みで。私は竹の左右に3本ずつ、計6本刺した。
竹にくっつけすぎると松の葉が混み合ってしまうので、少し離して刺すと良い。角度がイマイチだったり刺しすぎてしまったら、何度も抜いて刺し直そう。この刺し直しの工程や、隙間を埋める際に吸水スポンジだと大変やりやすかった。
長すぎる葉はハサミで切って整えていく。

概ね門松の形が出来上がったが、これだけでは少し寂しい。
もう一度山へ行って、装飾になるものを探してみよう。
門松を飾る
飾りについては特に決まりはなく、いろいろな飾りがあるようだ。
色味が特に寂しいので、赤い色のものを入れたい。庭の南天の木を見に行こう。
実がなかった。
だが葉っぱがキレイなので、少し枝を採っておく。
山への道すがら、笹の葉を発見。
門松のサイズが小さいので、笹藪の根本をかき分けてまだ小さいものを採取。
大きいものはもう葉が枯れ始めていたが、小さいものは色も青々としていて一石二鳥だ。
そこから少し歩いただけで、すんなりと目当ての赤い実も発見!
これは何の実だろう? 似た写真を探したところ、カンボクという植物の実が近そうだが、もう葉がすっかり落ちてしまっているので判断できなかった。
実の方もところどころ干からびてしまっているが、それもまた野生みがあって良し。

早速見つけた素材で飾ってみた。
イイ!!!

すごくイイ!すごく門松!!
だが今度は土台がちょっと寂しい。水引なんかも付けてみようか。
水引を作る
ここまで来たらせっかくなので、水引も自分で作ってみようと思う。
さすがに糸は作れないので、100均で水引用の糸(金・銀)を購入。
いろいろな結び方があるようだが、「あわじ結び」というのが基本の結び方らしいので、それをやってみよう。
まず30cmほどに切った金と銀の2本の糸を重ね、上の写真のように右側から曲げた方が上になる形で交差させる。
交差地点で上側になった方を、ぐるっと曲げて…
「め」の字のような形にする。この際、まだ糸はどこの穴にも通さず、ただ重ねただけなのでしっかり指で押さえていよう。
続いて、先ほど曲げたのとは逆の方もぐるっと曲げて、もう片方の糸の上側に持ってきて…
↑の❶〜❸の3つの穴に、縫うように順番に通していく。
これでほぼ完成。もう手を離してもバラバラにならない。

えっ、これだけ??
水引ってもっと、複雑な結び方をするのだと思っていた…。少し拍子抜けである。
3つの丸のバランスを整えたら、長すぎる糸を良い感じのところでカットして完成。
ちなみに水引用の糸は普通のハサミで切ると断面が潰れたりほつれたりするので、これも剪定バサミで切ってやるとキレイに出来るのでオススメ。

ここまでやって気付いた。
これ、どうやって門松に付けよう???

てっきり付けたいものに巻き付けた後、結ぶ際に水引にすると思っていたので何も考えていなかった。

……瞬間接着剤でいいか。
完成!!!!!

予想以上に良い出来!!
こんなに正月を感じてウキウキするのは生まれて初めてかもしれない。
今まで、家の中にいつの間にか飾られていて、片付ける日も忘れ去られて放置され、いつの間にか外されていた正月飾りだったが…

自分で作ると全然違う!!!

今年は気持ちの良い正月を迎えられそうである。
皆さんお忙しいとは思うが、「正月休みだけど何も予定ないな…」って人はぜひ作ってみて欲しい。買って来た材料ならば結構すぐ作れると思うので。


それではここまでお付き合いいただいた皆さん、
良いお年を!!!!
イグチ アイコの画像
岩手で生まれ、岩手で育ち、岩手の野山でキノコなどを探して徘徊している妖怪。主に山の話をします。本当はインドア派。
最近釣りも始めて休みがいくらあっても足りない。夢は定年退職。
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